何になるのかより、どう生きたいのか
 私は、薬剤師という別の顔があります。医療過疎地である山奥の薬局で働いていましたが、人々の健康に不可欠な「薬」とは、決して人の、心から思う健全な幸せ、生きようとする力までは治せず、更には「薬を飲まないといけない私」という点でマイナスの影響もあるかもしれないと感じるようになりました。実際に体内では薬が良い方向へ働いていても、結局は本人には目には見えない不確かなことで、マイナスの感情を持たせることもあるのではないかと。
 まだ薬剤師としてかなり未熟な私ですが、患者さんと向き合った時、一番患者さんが生き生きしたと感じる瞬間が「雑談」の機会でした。それは「医療者」と「患者」という関係でなく、一人の人間として興味を持ち合い、話し合い共感し合う時間です。人と人とのコミュニケーションです。全ての人は、人との共感の場と触れていないと気持ちよく過ごせないのではないのでしょうか。私はだんだん、患者さんに対し、薬剤師である職責を果たしつつ、雑談にかなり重点を置いて接するようになりました。
 ある日、いつも不機嫌にしているお婆さんに投薬した時、ぱっと表情を明るくされて、「薬局の植え込みの葉がとても赤くてすごくきれい!」と言われました。そのとき、私は驚いて、なんだ、たった見えた美しい色彩だけで人は心が上向くなら、アートはもっと凄い力を持っているのかもしれないと思ったのです。こうして、アートの可能性をもっと医療に、更には日本の新たな意識につなげていきたいと思うようになり、アートと社会をつなぐ勉強にこの学科で一から取り組むことにしました。

 今は、京都大学医学部附属病院内で、作品を展示、空間をデザインし、ワークショップを行うなど、アートとデザインによる院内環境の改善・コミュニケーションが促進される場づくりに取り組んでいます。ただの癒し・美しさだけを医療現場に置くのではなく、作品と人から生まれるコミュニケーションこそがアートという現象ととらえ、院内に関わる様々な立場の方をつなげて一つのコミュニティにしていきたいです。将来は、アートという深く楽しいコミュニケーションの力を社会にもっと発信し、様々な分野と繋ぐ活動をしたいです。

 高校生の中には進路で悩んでいる人もいると思います。私もそうでした。今の私が思うことは、将来、自分が何になるのかを考えるより、どう生きたいのか、何をしたいのか、そのためには今、何をすべきかを考えた方がいいかもしれないということ。ASP学科では、どの生き方にもつながる、大切なコミュニケーション力を学べます。多くの作品を、おおげさですが命がけでみるという楽しい授業があります!先生、先輩も家族的で優しいですので、皆さん、一緒に楽しいことをしましょう!


〈2011/08更新〉