ASP芸術表現・アートプロデュース学科
2007年度 カリキュラム

ユニークで優秀な研究者の育成

デュシャン以降のアメリカのアート
美術史Ⅰ・Ⅱ(後藤繁雄)
パリからNYへ。20世紀後半は、「アメリカのアート」の時代になった。その過程は、ヨーロッパ中心の美術の価値のシステムが解体・再編されたことを意味する。「現代美術の行方」を考える時、この「近過去」の総括・解体なしには、前へ進むことはできない。この授業では、スライドやビデオを使った基礎的概説と、作家論、作品へのアプローチ法を交互に行い、徹底的に「後期20世紀美術」を学習する。

モダニズムとアヴァンギャルド
美術史Ⅴ(大塚直子)
西洋の近代化は社会構造そのものの変容を促し、経済的・哲学的・科学的認識をもその波に巻き込んでいった。そこでは芸術もまた、社会の枠組みのなかで時代と連動しながら変貌を遂げる。本講義では、モダニズムの社会理念とそこから生じた芸術運動であるアヴァンギャルドの理論を確認し、19世紀末から20世紀半ばまでの美術史をふりかえる。

ポストモダン時代の芸術
美術史Ⅵ(大塚直子)
「これが芸術なの?」美術館に展示された不可思議なオブジェを前に、こうした疑問を抱いたことはないだろうか? モダニズムが終焉を迎えた後、ポストモダンと呼ばれる時代が到来したが、この時代の芸術を一言で語るのは難しい。本講義では、様々な様相を見せる現代芸術を、哲学的・思想的な観点から解釈することを目指し、現代における芸術の機能と今後の発展について考察する。

“肉体関係”と“身体問題”
美術史Ⅶ、Ⅷ(田川とも子)
当講義(ライブ)はR指定であり、自我が確立しており思慮分別あるオトナのためのアクトを提供する。時に異形で時に特殊、時に衝撃的ないくつかの肉体サンプルをまなざしながら、誰もが持っていながら実感を手放しつつある生身の覚醒をうながす「ライブ」を展開していきたい。もちろん、最初は少し痛いかもしれないが、やがては快感に繋がれるだろう。知ではなく血をさざめかせる、痛快なアクトをお楽しみいただきたい。

アートとドキュメンタリー
美術史Ⅸ(石谷治寛)
作品を効果的に記録することは芸術に関わるものにとって重要なことである。芸術作品から人物、社会までさまざまな対象をどのように映像で記録するかを、批評的な観点から考える。前期では代表的なアート・ドキュメンタリーの抜粋を鑑賞することによって、撮影・編集のテクニックを分析する。また、いくつかのパフォーマンス映像も鑑賞する。
あわせて、デジタルビデオカメラとコンピュータを使って、自分で映像と編集をする方法も学ぶ。使うソフトは、OSに添付のソフトとするが、10分くらいの作品紹介ビデオを撮影・編集・音入れをするのに十分である。事前の知識は特に必要ない。

90年代以降の現代アート(マルチ・カルチュラリズムの諸相)
美術芸術論Ⅰ、Ⅱ(市原研太郎)
本講では、90年代以降の現代アートの内容に特徴的な傾向であるマルチ・カルチュラリズムを、この時代のアートを理解するための解読格子として採用する。その思想的背景を踏まえたうえで、マルチ・カルチュラリズムを主題とする作品群を具体的に挙示する。すでに90年以前から現代アートに重要なテーマを提供してきたその多様な流れが、90年代以降現在までどのように形成され拡大してきたのかを追跡する。併せて21世紀のアートの展望も行う。

森山大道研究
美術芸術論Ⅸ、Ⅹ(清水穣)
写真の現在を最も過激に展開しつつある作家の一人、森山大道の作品を、初期から2006年の「新宿+」まで検証します。影響関係や同時代の写真論などをあわせつつ、全集に沿って細かく全ての作品を見ていきます。

両大戦間パリというトポス
美術芸術論Ⅲ(林洋子)
第一次世界大戦と第二次世界大戦のあいだのパリは、フランス人に限らず世界各地から芸術家が集まり、たいへんホットな状況を迎えていた。この授業では「両大戦間」のパリという国際都市の様相を、時間軸やシュルレアリスムや抽象などの美術のムーブメントではなく、美術家の出身国や、「写真」や「女性」といった新たなテーマから見直していく。

女性美術家研究
美術芸術論Ⅳ(林洋子)
19世紀後半以降、社会通念や教育制度の変化により、少しずつ美術の専門教育を受ける女性が出、プロの美術家として活動する者が登場していく。しかし、そこには今日のわれわれには想像することが難しい、テーマの限定や社会的束縛があった。この授業では19世紀末から1990年代に登場した女性美術家を取り上げ、作例と社会背景を分析する。

1980年代と写真
芸術論特講Ⅰ(竹内万里子)
80年代は日本の写真界にとって不毛の時代であったといわれることすらある。だが実際、90年代以降の写真ブームを可能にする社会的・文化的・制度的準備を整えたのはこの時代だった。その象徴的な出来事が85年における「カメラ毎日」の休刊と「つくば写真美術館‘85」でもあった。これまであまり語られることのなかった80年代における写真の状況を様々な側面から検証することを通じて、現代写真の転換点を探りたい。

イタリアの都市と建築との関連から見る美術史
芸術論研究Ⅰ(川上眞理)
前期は、イタリア半島に展開した古代から近世までの美術史を、都市、建築様式、歴史との関係から考察することを目的とする。時系列に添い、イタリアの都市ごとに、建築・絵画・彫刻の傑作を検証していきたい。後期は、イタリアと日本を中心に、今日では分離しているように見える美術と建築の相互関係を領域横断的に考察することを目的とする。歴史を繙きながら、絵画と建築、彫刻と建築の関わりの深さを検証していきたい。

20世紀後半の美術理論
芸術論研究Ⅱ(市原研太郎)
20世紀のアートの活動と、それをめぐる言説(理論、批評)の相互作用について考察する。20世紀の後半のアートを三つの時代─モダン、ポストモダン、ポストモダン以降─に区分し、各々の活動の背景にあって、それらを支持し正当化する代表的な文献を取り上げ、その歴史的変遷を跡付けする。さらに同時代のアートと関連させることで、実際にどのような影響をアートに及ぼしたのかを検証する。2000年以降の潮流は研究課題とする。

中国工芸史
芸術論研究Ⅳ(出川春海)
芸術分野の中でも、生活に密着してきた「工芸」という部門を取り上げ、人々の美意識の変遷について考察する。特に中国の工芸について、その歴史を辿ってみたい。日本の文化とのかかわりについても随時述べる。具体的には、古代の玉器や青銅器に始まり、金銀器や漆器、陶磁器についてスライド等を使用しながら学ぶ予定である。あわせて作品にあらわされた文様の図像と意味についても考えていきたい。 

京の美術史・フィールドワーク

前近代~現代における日本工芸の特色と動向
美術史 Ⅸ、Ⅹ(中ノ堂一信)
豊かな精神活動のもとで生活に彩を与えてきた日本の工芸美術、工芸文化について考える。前期では前近代の重要な工芸美術、工芸文化の特色と動向を紹介し、後期では近代以降の工芸の動向と現代工芸の諸相を紹介する。講義では内容の理解を深めるためにレジメ、スライド、ビデオなどを積極的に使用する。

日本絵画史
美術史Ⅲ(金澤弘)
日本絵画史を通史的に概観する。主にカラースライドによって(機会を見つけて実作品の鑑賞研究を交えながら)代表的な作品をとり上げ、その特徴と芸術性を紹介し、それが生み出された社会の動向、背景にある思想、画家の個性などについて考える。さらに彫刻や工芸などの他ジャンルの作品にもふれながら、総合的に我々の先祖の日本人の美意識の変遷をたどり、その特色を見出す。 

日本絵画史
美術史Ⅳ(金澤弘)
前期(美術史Ⅲ 古代から中世まで)の展開をふまえながら、急速に多様化しながら、近世から明治時代に至る絵画史の面白さと画家の性格を追跡する。またそれらを鑑賞する場としての建築や庭園との関連について、さらに先例になった中国大陸や朝鮮半島の絵画との異同、あるいはまったく異なった背景をもつ西洋絵画との比較しながら、それぞれの文化史的な背景についても考えていく。 

美術は現場で起こっている! 芸術の都・京都
フィールドワークⅠ(金澤弘・黒川修一・中ノ堂一信)
フィールドワークは単なる見学ではない!机上の空論ではなくて、制作の現場や実際の作品を調査することによって、オリジナルな考察を深めていくことである。Ⅰでは、寺院や神社、美術館、博物館などでの調査の手法や物の見方のような事を講義形式で学ぶと共に、集中講義形式で、学外に出て実際にフィールドワークをしてもらう。対象は、主に近代までの美術と工芸(工芸に関しては現代も含む)の予定である。

美術館を外と中から体験する
フィールドワークⅡ(福のり子・山下里加)
本授業ではふたつのことを行う。まず、ACOPで学んだことを基礎に美術館や他の学校で、大人や子供たちを相手に作品鑑賞会を行う。これは将来アートの分野で仕事をしたいと思っている学生や、教員を目指す人たちにとっては重要な体験となる。次に「アートプロデュース論1」の授業と共同で、「美術館調査」を行う。多くの美術館を実際にみて、その実態を把握し、問題点を考察し、観客と作品を結ぶ場としての美術館のあり方を考察する。最後に、各自の調査をまとめて報告書を作成。

アートを探しにいこう
フィールドワークⅢ(市原研太郎)
まずアートを自明と考えるのではなく、社会(経済や制度)の枠組みの内と、それを越えた世界にその活動の可能性を探る。アートのシステムの内外、具体的には画廊、美術館、街中、さらに範囲を広げて未知の領域に、アートの新しい姿を見出すべくリサーチする。このように既成の境界を取り払ってアートを探索するなかで、アートを発見することとそれを発明することが同義であることを学ぶ。それを各人の全感覚を駆使して体験すること。

日本絵画論
芸術論研究Ⅴ(黒川修一)
日本の近世~現代の絵画を主な対象とし、以下のような具体的なモティーフを通じて、日本美術の様式論・イコノロジー・芸術社会学的な問題について考えていく。

アートの力を社会化する

芸術環境の考察と個人活動の再考
アートプロデュース特講Ⅱ(木ノ下智恵子)
社会と現代芸術を繋ぐアートプロデュースには、展覧会企画、画廊経営、アーティストマネジメントなど様々な手法がある。ただし、その根底には独自の理念が必要である。ここでは表象的な手法論(スキルやノウハウ)ではなく、生徒の主体性を重視したグループディスカッションと学外のフィールドワーク(アートスペースや企画展の視察)を複合的に実施して考察を深め、独自のアートプロデュース論の定義を紡ぎだすことを目的とする。

アートと美術館の現在
アートプロデュース論Ⅰ、Ⅱ(福のり子・山下里加)
日本における美術館および展覧会をとりまく社会状況は、急変している。この授業では、現在日本の美術館が置かれている状況を知り、学生ならではの視点から美術館を調査、研究する。また、アサヒビール大山崎美術館や本大学のギャラリーRAKUにて行われる展覧会やワークショップを企画、運営し、現場で必要なマナーや技術を習得する。さらには、美術館および展覧会をより観客や社会に開いていくための各人の見解を獲得する。

アートと社会-過去、現在、そして未来
アートプロデュース論Ⅳ(加藤種男)
アートプロデューサーになるための必要事項を網羅する。どういうアートをどのようにプロデュースするのか。アートの振興のための基盤整備をどのように進めるのか。ただし、本講座の重点は、技術的な点ではなく、アートと社会との関係を明らかにすることにある。つまり、どういうアートが現在の私たちにとって重要か、それはなぜかを重視して、アートの社会的な価値を再確認し、それが生み出される背景を考察する。

社会とドキュメンタリー
美術史Ⅹ(石谷治寛)
アートのドキュメンタリーをより広い歴史・社会のなかで考える。芸術作品から人物、社会までさまざまな対象をどのように映像で記録するかを、批評的な観点から考える。後期では社会を扱ったドキュメンタリーやフィクション映画の抜粋から、映像によって空間や時間、人物や出来事を描く技法を学ぶ。あわせて、デジタルビデオカメラとコンピュータを使って、自分で映像と編集をできるようになる

ウェブマガジンのつくり方
コンピュータ演習Ⅱ(小崎哲哉)
現代的表現におけるITの重要性は言を俟たない。調査分析・企画制作ツールとして、そして発表メディアとしてのコンピュータ及びインターネットについて学び、グローバリゼーションの時代に不可欠のメディアリテラシーを育成する。併せて、実際にウェブマガジン制作に携わることによって、現代と近未来にふさわしい編集技術を身につける(プログラミングなど、コンピュータ操作に関わる技術習得を目的とするものではない)。 

アート/人間/社会
美術芸術論Ⅴ(藤澤三佳)
芸術社会学の視点から、アートと人間の自己表現、アートと社会を結ぶこと、アートの社会的意義を考える。教育、精神医療、福祉の現場におけるアートをとりあげ、障害者と芸術活動、精神病院でのアートセラピー、こどもとアートについて考察する。書物を読み、映像で基礎知識を学んだ後に、本学のこども芸術大学、アウトサイダー・アートをうみだす工房やアトリエへ見学に行くことを含む。

アートと自己表現
美術芸術論Ⅵ(藤澤三佳)
芸術社会学の視点から、アート・人間・自己表現をキーワードに、アートと人間の自己表現、アートと社会との関係を考える。ジェンダー論から、女性のアーティストと自己表現に関して、またライフヒストリー論から、アーティストの人生について、映画、文学、絵画等を通して考察する。授業では、具体的に、さまざまな映像をみることを中心にする。

ACOP (Art Communication Project)
芸術表現演習Ⅰ、Ⅱ(福のり子)
鑑賞者と作品の間にコミュニケーションがなければ、「アート」は成立しない。将来アート界で働こうとする学生たちに、まず自分自身と作品とのコミュニケーションを図ってもらう。つぎに学生自身が作品と観客をつなぐ役割を担う「ナビゲイター」となり、後期に「ACOP:鑑賞者研究プロジェクト」を実施する。大学内外から募ったボランティア鑑賞者を対象に、実践を通してスキルを学ぶ。

現代写真論
芸術表現演習Ⅲ(後藤繁雄)
近年、写真はアートシーンの中でもきわめて重要な存在になりつつある。20世紀の写真史をふりかえりながら、特徴的なアーティストをとりあげ、その方法論、芸術論、そして写真をアートとしてあつかうキュレイションまで、集中的に概観する。

編集と芸術(アートマガジンを中心に)
芸術論研究Ⅲ(後藤繁雄)
現在、アートは音楽・ファッション・文学など、さまざまなサブカルチャーとリンクして動いている。アートを学ぶにはそれらのサブカルチャーを動かしている雑誌と編集について知ることが不可欠である。この授業ではアートマガジンを中心に各ジャンルの雑誌がどのようなコンセプト・技術・ネットワーク・ビジネスモデルに基づきつくりだされているのかを学習していく。授業のなかで制作に携わるスタッフをゲストに招待することもあり。

ASP学科における言語表現の基礎学習
表現基礎Ⅰ、Ⅱ(新元良一・田川とも子・田中聡・藤澤三佳)
ASP学科では、絵画や彫刻など芸術作品を制作するわけではない。しかし、芸術作品を観賞したり、それに馴染んだ上で、「美しさ」や「素晴らしさ」を独自の観点や言葉で他者に伝える意味で、本学科の学生に求められる言語表現もまた、芸術に携わる活動として位置づけできるであろう。本講義では、写真や絵画を観賞の対象とした言語による描写やリサーチの進め方など、言語表現の基礎的な学習を進めていき、研究や論文作成にも活用できる技術を身につける。

スペシャルレクチャー&ワークショップ

“現場の声”を聞く
クリエイティブ・ライティング特講Ⅰ・Ⅱ(新元良一・他)
言語表現の仕事に限らず、先達の存在ほど心強いものはない。実績のある彼らをロールモデルとし、これまでの経験から多方面での貴重な意見やアドバイスが受けられるからだ。本講義では、現役の作家やエッセイスト、ジャーナリスト、経験豊かな編集者や出版プロデューサーなど、言葉を生業とするプロをゲストに迎え、培ったキャリアだけにとどまらず、生き方や信条についてもうかがう。

現役アーティスト、キュレイター、研究者によるレクチャー
芸術表現特講Ⅰ、Ⅱ
キュレイションやアートプロデュース、また研究のためには、アーティストたち自身が考えている「芸術」についての視点を知ることがきわめて重要であり、生きた芸術論を知ることが不可欠である。本講義では毎週国内外で活躍するアーティストや展覧会という場をつくりあげるキュレイター、美術についてさまざまな角度から研究を行う研究者を招聘し、本学教員によるナビゲートのもと多彩なレクチャーを展開する。